「先天性疾患とはどのような病気なの?」「原因や治療法について知りたい」と考えている保護者の方も多いのではないでしょうか。
先天性疾患とは、生まれたときから体の構造や機能に異常がみられる病気や状態の総称です。症状や重症度はさまざまで、出生直後に見つかるものもあれば、成長してから診断されるものもあります。
この記事では、先天性疾患の基本的な意味や原因、代表的な種類、診断される時期、治療方法についてわかりやすく解説します。また、受診を検討したほうがよいサインや相談先についても紹介するので、お子さんの健康について不安がある方はぜひ参考にしてください。
先天性疾患とは?
先天性疾患とは、生まれたときから体の構造や機能に異常がある病気や状態のことです。妊娠中の発育過程で生じるものが多く、その種類や症状、重症度はさまざまです。ここでは、先天性疾患の基本的な意味や、生まれつきの病気との違い、発症する割合について解説します。
生まれつきの病気との違い
先天性疾患とは、出生時にすでに存在している病気や体の異常を指します。「生まれつきの病気」とほぼ同じ意味で使われることが多いものの、厳密には少し違いがあります。生まれつきの病気という言葉は広い意味を持ち、出生時からあるあらゆる病気を含みます。一方、先天性疾患は、胎児の発育中に起こった体の形態異常や機能異常などを医学的に表す用語です。
先天性疾患には、心臓の形に異常がある先天性心疾患や、染色体異常、口唇口蓋裂、代謝異常などさまざまな種類があります。出生直後に診断されるものもあれば、成長してから症状が現れ、初めて見つかるケースも少なくありません。そのため、出生時に異常が見つからなかったとしても、成長に伴って医療機関で診断されることがあります。
先天性疾患はどのくらいの割合で起こる?
先天性疾患は決して珍しいものではなく、およそ3〜5%(約20〜30人に1人)の赤ちゃんに何らかの先天性疾患があるとされています。ただし、その多くは軽度で日常生活への影響が少ないものから、専門的な治療や経過観察が必要なものまでさまざまです。
また、先天性疾患の中には出生直後にわかるものだけでなく、新生児マススクリーニングや乳幼児健診、成長過程での検査によって見つかるものもあります。近年は出生前検査や新生児医療の進歩により、早い段階で診断・治療につなげられるケースが増えています。不安な症状や健診で気になる点を指摘された場合は、一人で悩まず小児科や専門医へ相談することが大切です。
先天性疾患が起こる主な原因
赤ちゃんが生まれつき何らかの病気や障害を持っている状態を「先天性疾患」と呼びます。「なぜうちの子が?」と悩む親御さんは多いですが、原因はひとつではなく、さまざまな要因が複雑にからみあっています。まずは、主な原因について分かりやすく整理してみましょう。
遺伝的な要因
先天性疾患の原因のひとつが、遺伝子や染色体に関係するものです。遺伝子とは、親から子へと受け継がれる”体の設計図”のようなもので、この設計図に変化(変異)が起きると、体の発達に影響が出ることがあります。たとえば、両親のどちらかが特定の遺伝子を持っている場合に子どもに伝わるケースや、受精のときにたまたま染色体の数や形に変化が起きるケースがあります。遺伝的な原因による疾患は、家族の中に同じ病気を持つ人がいることもありますが、必ずしも親が同じ病気を持っているわけではありません。遺伝子の変化は誰の体にも起こりうるものです。
妊娠中の環境要因
赤ちゃんがお腹の中で育つ時期に、外からの影響によって体の発達に問題が生じることもあります。たとえば、妊娠中にある種の薬を服用した場合、風疹などの感染症にかかった場合、アルコールや喫煙による影響、あるいは放射線への長期的な曝露などが知られています。特に妊娠初期は赤ちゃんの臓器や体の基礎がつくられる大切な時期で、この時期に影響を受けると先天性疾患につながりやすいとされています。ただし、これらのリスクがあるからといって、必ず疾患が生じるわけではなく、あくまでも可能性が高まる要因のひとつです。
原因が特定できないケースも多い
実は、先天性疾患の中には「原因がはっきりわからない」ものも多くあります。医療が進歩した現在でも、約半数の先天性疾患は原因が特定できていないといわれています。検査をしても遺伝子に明確な異常が見つからず、妊娠中に気をつけていたにもかかわらず発症することも珍しくありません。そのため、「自分のせいだ」と自分を責めてしまう親御さんもいますが、原因不明のケースでは誰のせいでもないことがほとんどです。原因がわからないことに不安を感じるのは当然ですが、治療や支援は原因がわからなくても受けることができます。
代表的な先天性疾患の種類
先天性疾患にはさまざまな種類があり、症状や体への影響も異なります。種類によって、治療法や日常生活での注意点も変わってきます。ここでは、子どもに比較的多く見られる代表的な先天性疾患を5つ取り上げ、それぞれの特徴をわかりやすく解説します。
先天性心疾患
先天性心疾患とは、生まれつき心臓の形や働きに異常がある状態のことです。心臓の壁に穴があいていたり、血管のつながり方が通常と異なっていたりと、異常の種類は多岐にわたります。日本では約100人に1人の割合で生まれると言われており、比較的よく見られる先天性疾患のひとつです。軽いものは自然に改善することもありますが、手術が必要なケースも多くあります。近年は医療技術の進歩により、手術後に元気に成長する子どもがたくさんいます。早期発見が大切なため、出産直後の赤ちゃんの健診でも心臓の音や血液の流れを確認することが行われています。
染色体異常(ダウン症候群など)
染色体とは遺伝子が集まったもので、通常は46本(23ペア)あります。染色体の数や構造に変化が生じることで起きる疾患を「染色体異常」と呼びます。代表的なものがダウン症候群で、21番染色体が1本多い47本になることで起こります。ダウン症候群の子どもは独特の顔立ちや筋緊張の低下(体がやわらかい)などの特徴を持つことが多く、知的発達にゆっくりとした傾向があります。また、心臓の問題など他の疾患を合併することもあります。ただし、症状の程度は人によって大きく異なり、適切なサポートがあれば社会の中でいきいきと生活している方も多くいます。
口唇口蓋裂
口唇口蓋裂は、上唇や上あご(口蓋)が妊娠中に正しくくっつかずに生まれてくる状態です。唇だけに裂け目がある「口唇裂」と、上あごにも及ぶ「口蓋裂」があり、片側だけのこともあれば両側のこともあります。日本では約500人に1人の割合で生まれると言われており、先天性疾患の中でも比較的よく見られるものです。生まれた直後は授乳がうまくできないことがあるため、専用の哺乳瓶を使ったり、工夫が必要になります。治療は手術が中心で、唇は生後3〜6か月ごろ、口蓋は1〜2歳ごろに手術を行うことが多く、成長とともに少しずつ整えていきます。
先天性代謝異常
体の中では、食べたものを分解・変換して必要なエネルギーや栄養素をつくる「代謝」という働きがあります。先天性代謝異常は、その代謝に必要な酵素(化学反応を助けるたんぱく質)が生まれつき不足・欠乏しているために起こる疾患です。酵素が十分に働かないと、体の中に分解されないまま物質がたまったり、必要なものが不足して臓器や脳に影響を及ぼすことがあります。日本では生まれた直後に「新生児マス・スクリーニング」という血液検査を行い、早期発見に努めています。疾患の種類によっては、特定の食品を制限した食事療法や薬による治療を続けることで、健康に過ごすことができます。
先天性難聴・視覚障害
生まれつき聴こえにくい・聴こえない状態を「先天性難聴」、見えにくい・見えない状態を「先天性視覚障害」と呼びます。先天性難聴は新生児約1,000人に1〜2人にみられ、先天性の障害の中でも頻度の高いものです。原因は遺伝的なものや、妊娠中の感染などさまざまです。日本では出産後すぐに「新生児聴覚スクリーニング」という検査が行われており、早期に発見できれば補聴器や人工内耳を使った支援が可能です。視覚障害についても、白内障や緑内障が生まれつき見られるケースがあり、早めに治療を始めることが視力の発達に大きく影響します。いずれも早期発見・早期支援がとても大切です。
先天性疾患はいつわかる?
先天性疾患は、必ずしも生まれた瞬間にわかるわけではありません。妊娠中に判明するものもあれば、成長してからはじめて気づかれるものもあります。「いつ・どのようにわかるのか」を知っておくことで、いざというときに落ち着いて対処できるようになります。
妊娠中の出生前検査でわかる場合
妊娠中に行う検査(出生前検査)によって、赤ちゃんの状態を事前に確認できる場合があります。超音波(エコー)検査では、心臓の形や手足の発達、脳の構造などを画像で確認でき、異常が疑われることがあります。また、血液検査や羊水検査などによってダウン症候群などの染色体異常を調べることも可能です。ただし、これらの検査はすべての疾患を発見できるわけではなく、あくまでも「可能性を調べるもの」です。検査を受けるかどうかは、家族がよく話し合い、必要に応じて医師やカウンセラーに相談しながら決めることが大切です。
出生直後の診察で見つかる場合
赤ちゃんが生まれた直後に行われる診察(新生児診察)で、先天性疾患が見つかることがあります。医師や助産師が全身を丁寧に確認し、心臓の音の異常、口蓋裂や口唇裂、手足の形の異常、股関節の状態などをチェックします。特に先天性心疾患は、チアノーゼ(唇や顔が青紫色になる)や心雑音などのサインから気づかれることがあります。生まれてすぐに異常が見つかれば、早い段階で治療や対応を始めることができるため、この初期診察はとても重要です。見た目だけでは気づきにくい場合もあるため、心配なことがあれば遠慮なく医師に伝えることが大切です。
新生児マススクリーニングで見つかる場合
生まれて数日以内に、かかとから少量の血液を採取して行う「新生児マススクリーニング検査」があります。この検査では、先天性代謝異常や甲状腺の病気など、見た目ではわかりにくい約20種類以上の疾患を調べることができます。早期に発見して治療を始めることで、症状が出る前に対処できるのが大きな利点です。日本ではほぼすべての赤ちゃんがこの検査を受けており、引っかかった場合は再検査や専門医への受診が勧められます。再検査になっても必ずしも疾患があるわけではなく、確認のための検査であることが多いため、通知が届いても過度に心配しすぎず、まず医師の指示に従いましょう。
成長してからわかるケースもある
先天性疾患の中には、赤ちゃんのころは症状が目立たず、成長とともにはじめて気づかれるものもあります。たとえば、軽度の難聴は言葉の発達の遅れとして気づかれることがあり、視覚の問題は「物をじっと見ない」「目を細める」などの様子から発覚することもあります。また、代謝の異常は食事の内容が変わるにつれて症状が現れるケースもあります。乳幼児健診や学校健診などが発見のきっかけになることも少なくありません。「少し気になる」と感じたことは記録しておき、健診や受診のときに医師へ伝えるようにすると、早期発見につながりやすくなります。
先天性疾患が疑われたときの対応
検査で異常が疑われたり、医師から「もう少し詳しく調べましょう」と言われたりすると、頭が真っ白になる親御さんも多いと思います。しかし、疑いの段階ではまだ確定ではなく、次のステップを一つひとつ踏むことが大切です。落ち着いて対応できるよう、流れを確認しておきましょう。
まずは医療機関で詳しい検査を受ける
先天性疾患が疑われた場合、まずは医師の指示に従って詳しい検査を受けましょう。血液検査、超音波検査、心電図、MRIなど、疾患の種類によって行われる検査は異なります。「再検査と言われたけれど怖くて行けない」という気持ちは理解できますが、早く検査を受けるほど、早く対応を始めることができます。検査を受けることで「異常なし」と確認される場合も多く、疑いを放置しておくよりも精神的な安心につながることがほとんどです。受診の際は、子どもの様子や気になっていることをメモしておくと、医師に伝えやすくなります。
必要に応じて専門医を受診する
かかりつけの小児科で検査を受けた後、より専門的な知識や設備が必要な場合には、専門医や専門病院への受診が勧められることがあります。たとえば、心臓の疾患なら小児循環器科、染色体異常なら小児遺伝科、聴覚に関することなら耳鼻科や聴覚センターなど、それぞれの疾患に合った専門機関があります。「専門病院に紹介されると不安が増す」と感じる方もいますが、専門医がいる施設ではより正確な診断と適切な治療を受けやすいのが利点です。紹介状を書いてもらうことで受診がスムーズになるため、まずはかかりつけ医に相談しましょう。
家族だけで抱え込まず相談する
先天性疾患が疑われたとき、親御さんは「なぜ?」「どうすればよかったのか」と、ひとりで悩みを抱えてしまいがちです。しかし、不安や心配は家族だけで抱え込まず、医師や看護師、医療ソーシャルワーカーなどに率直に話してみましょう。病院によっては、相談窓口を設けていたり、同じ疾患を持つ子どもの親御さんとつながれる患者会を紹介してくれたりすることもあります。ひとりで全部理解しようとしなくても大丈夫です。「わからないことが多くて不安です」と伝えるだけでも、医療者は寄り添ってくれます。
正確な情報を得ることが大切
インターネットで検索すると、さまざまな情報が出てきます。しかし、中には古かったり不正確だったりする情報も混じっているため、すべてを鵜呑みにするのは危険です。信頼できる情報源としては、担当医や専門医の説明のほか、国立成育医療研究センターや難病情報センターなど、公的機関が提供する情報が参考になります。「ネットで見たのですが本当ですか?」と医師に確認する形で活用するのが安心です。情報が多すぎて混乱したときは、一度立ち止まり、信頼できる医療者に「何を優先すればよいか」を聞くことをおすすめします。
先天性疾患の治療とサポート
先天性疾患と診断されると、治療や今後の生活について心配になる方も多いでしょう。ただ、医療の進歩により、多くの先天性疾患で有効な治療法があり、適切なサポートを受けながら生活の質を保つことができるようになっています。治療だけでなく、生活全般を支える仕組みについても知っておきましょう。
病気に応じた治療が行われる
先天性疾患の治療は、疾患の種類や重さによってさまざまです。手術が必要なもの(心臓の構造の問題や口唇口蓋裂など)、薬で管理するもの(甲状腺ホルモンの補充など)、食事療法が中心になるもの(先天性代謝異常など)など、それぞれに適した治療が行われます。どの治療法も、医師がその子どもの状態に合わせて計画を立てるため、「この疾患だからこうなる」と決まっているわけではありません。治療の方針に疑問や不安があれば、遠慮なく医師に質問して、納得した上で進めるようにしましょう。
リハビリや療育が必要になることもある
疾患によっては、治療と並行してリハビリや療育が必要になることがあります。リハビリとは、身体機能の回復や発達を助けるための訓練で、理学療法士や作業療法士、言語聴覚士などの専門家が担います。療育とは、発達に遅れや課題がある子どもが、生活や社会参加に必要なスキルを身につけるための支援です。「うちの子に必要かな?」と思ったら、担当医や健診のときに相談してみましょう。早い段階からリハビリや療育を始めることで、その後の発達に良い影響が出ることが多く、「もっと早く始めればよかった」という声も少なくありません。
公的支援制度を利用できる場合がある
先天性疾患を持つ子どもを育てるには、医療費や療育の費用が大きな負担になることがあります。そのため、日本ではさまざまな公的支援制度が用意されています。たとえば、「小児慢性特定疾病医療費助成制度」は、対象となる疾患を持つ18歳未満の子どもの医療費を助成するもので、多くの先天性疾患が対象に含まれています。また、障害の程度に応じて「障害者手帳」が取得でき、医療費の軽減や各種サービスの利用につながることがあります。制度は複雑でわかりにくい部分もあるため、病院のソーシャルワーカーや市区町村の窓口に相談することをおすすめします。
家族へのサポートも重要
先天性疾患を持つ子どもを育てる親御さん自身も、心身のケアが大切です。医療のことや日常生活のこと、将来のことなど、心配の種は尽きないかもしれません。同じ疾患を持つ子どもの親御さんが集まる患者家族会や、オンラインのコミュニティは、実際の体験談や情報を共有できる貴重な場です。また、医療機関によっては心理士や精神科医によるメンタルサポートを提供しているところもあります。「子どものことで精一杯」と自分のことは後回しにしてしまいがちですが、親御さんが元気でいることが、子どもにとっての一番の支えになります。
子どもの様子で受診を検討したほうがよいサイン
「なんとなく気になるけれど、受診するほどでもないかな」と迷う親御さんは多いものです。しかし、先天性疾患の早期発見には、日頃の小さなサインを見逃さないことが大切です。以下のような様子が続く場合は、早めに小児科への相談を検討しましょう。
母乳やミルクを飲みにくそうにしている
授乳のたびに疲れてしまう、飲む量が少ない、むせることが多い、唇が青ざめるなどの様子がある場合は注意が必要です。心臓や口腔の形の問題、飲み込みに関わる神経・筋肉の問題などが背景にある場合があります。とくに「飲むたびに汗をびっしょりかく」「授乳中に顔色が悪くなる」という場合は、心臓への負担が考えられることがあるため、早めに医師へ相談することをおすすめします。「これくらい大丈夫かな」と様子を見ていると気づくのが遅れることもあるため、心配を感じたらまず小児科に電話で相談するだけでも構いません。
体重が増えにくい
赤ちゃんは生後数か月でぐんぐん体重が増えるのが一般的ですが、なかなか体重が増えない場合は何らかの原因が隠れていることがあります。先天性心疾患や消化器の疾患、代謝の問題などがあると、食べても栄養がうまく利用されなかったり、体がエネルギーを使いすぎてしまったりすることがあります。母子手帳の成長曲線を活用して、体重の増え方が大きく外れていないかを確認しましょう。「小さくても元気だから大丈夫」と思いたい気持ちはわかりますが、成長の遅れが続く場合は一度小児科に相談することが大切です。
呼吸が苦しそう・顔色が悪い
呼吸が速い、胸が激しく上下する、肋骨が浮き出るほど呼吸をしている、唇や爪の色が青紫っぽいといった様子は、心臓や肺に関わる疾患のサインである可能性があります。これらは緊急性が高い場合もあるため、気になる様子があれば早急に医療機関を受診してください。とくに顔色が青白い・青紫になるチアノーゼは、すぐに受診が必要なサインです。「泣いたからかな」「寒かったからかな」と判断がつかないときは、まず病院に電話で状況を伝えて指示を仰ぐのが安全です。
発達や成長で気になることがある
首のすわりや寝返り、お座り、歩き始めなどの発達の目安よりも大幅に遅れている場合、視線が合いにくい、音に反応しないように見える、言葉がなかなか出ないといった気になる点がある場合は、早めに相談することをおすすめします。発達の個人差は大きいため「少し遅いだけかも」と感じることもありますが、早めに専門家に相談することで、必要なサポートを早く始めることができます。「心配しすぎ」と思われることを恐れずに、気になることは健診や受診の場で積極的に伝えましょう。
健診で再検査を勧められた
乳幼児健診や学校健診で「もう一度検査を受けてください」と言われると、驚いてしまう方もいるかもしれません。しかし、再検査はあくまでも「念のための確認」であることがほとんどです。一度の検査ではっきりしなかった場合や、より詳しく調べた方がよいと判断された場合に勧められるものであり、再検査イコール疾患があるということではありません。とはいえ、「大丈夫だろう」と放置するのは避けましょう。勧められた検査はきちんと受けることで、早期発見・早期対応につながります。受診先や検査内容がわからない場合は、健診を行った機関に問い合わせてみましょう。
不安なときは小児科や専門医へ相談しよう
子どもの体のことで「何かおかしいかも」と感じたとき、その直感を大切にしてください。専門家への相談は、心配を解消するためにも、早期対応のためにも大きな助けになります。「たいしたことないかも」「忙しいから」と後回しにせず、積極的に活用できる方法を知っておきましょう。
気になる症状は早めに相談する
「受診するほどでもないかも」と思っていても、気になる症状があれば早めに小児科に相談することをおすすめします。先天性疾患に限らず、子どもの病気は早期発見・早期対応が大切です。受診のタイミングが早ければ早いほど、治療の選択肢が広がることが多く、親御さんの精神的な負担も軽くなります。「受診して何もなかったら恥ずかしい」という心配は無用です。医師は「また来てくれてよかった」と思っており、受診する勇気を評価してくれます。気になることはメモにまとめて持参すると、診察がスムーズに進みます。
定期健診を活用する
乳幼児健診(1か月・3〜4か月・6〜7か月・9〜10か月・1歳・1歳6か月・3歳など)は、先天性疾患を含むさまざまな問題を早期に発見するための大切な機会です。健診では身長・体重の計測だけでなく、運動発達・言語発達・視力・聴力なども確認されます。健診をただこなすのではなく、日頃から気になっていることを積極的に伝える場として活用しましょう。また、健診の間隔が空いているときでも、心配なことがあれば健診を待たず受診して構いません。健診は「異常がないか確認する場」であると同時に、「育児の相談ができる場」でもあります。
オンラインで相談できるサービスもある
近年は、オンラインで医師や看護師に相談できるサービスが増えています。「夜中に子どもの様子が心配になった」「すぐに病院に行けない」「受診すべきか判断できない」というときに役立ちます。自治体が提供する「子ども医療電話相談(#8000)」は、夜間でも看護師などに電話で相談できる全国的なサービスで、ぜひ覚えておいてほしい番号です。また、スマートフォンアプリや医療機関のウェブサイトを通じたオンライン診療も普及しており、気軽に相談しやすい環境が整ってきています。ただし、緊急性が高い症状はすぐに救急受診を優先しましょう。
一人で悩みを抱え込まないことが大切
子どもの健康に関する不安は、親御さんにとって非常に大きなストレスになります。「自分がしっかりしなければ」と思うあまり、悩みをひとりで抱え込んでしまう方も少なくありません。しかし、悩みを話すことは決して弱いことではなく、子どものためにもなる大切な行動です。パートナーや家族はもちろん、かかりつけの医師・看護師・保健師にも気持ちを打ち明けてみましょう。同じ経験をした親御さんのコミュニティやSNSグループも、孤独感を和らげる支えになります。あなたは一人ではありません。
先天性疾患に関するよくある質問
先天性疾患について、保護者の方からよく寄せられる疑問をまとめました。一つひとつの答えは医師によって異なる場合もありますが、基本的な考え方を知っておくことで、受診時の相談や情報収集に役立てることができます。
先天性疾患は予防できますか?
すべての先天性疾患を予防することは現時点では難しいですが、リスクを下げるための対策はあります。妊娠前・妊娠中に葉酸を摂取することで、脳や脊椎の発達に関わる疾患(神経管閉鎖障害)の発症リスクを下げられることがわかっています。また、妊娠中の喫煙・飲酒を避ける、感染症(特に風疹)の予防接種を受けておく、定期的に産科を受診するなども大切な対策です。ただし、これらを実践しても先天性疾患が起きることはあり、「予防できなかったから自分のせい」とは考えないでください。できることをしていれば、それで十分です。
先天性疾患は必ず遺伝しますか?
先天性疾患がすべて遺伝するわけではありません。遺伝的な原因によるものは遺伝する可能性がありますが、遺伝の仕方はさまざまで、「親が持っていると必ず子どもに出る」という単純なものではありません。また、妊娠中の環境要因や原因不明のケースは、基本的に遺伝とは関係がありません。「次の子どもにも遺伝するのか」「兄弟や親族に影響があるか」など、遺伝についての具体的な心配がある場合は、遺伝専門医(遺伝カウンセラー)に相談することで、正確な情報と心理的なサポートを得ることができます。
妊娠中に先天性疾患はわかりますか?
一部の先天性疾患は妊娠中の検査でわかることがありますが、すべてがわかるわけではありません。超音波検査で心臓や臓器の形を確認できる場合もありますが、軽度の異常や代謝の問題は妊娠中に発見しにくいこともあります。また、出生前検査を受けるかどうかは任意であり、どの検査を受けるかも家族が選ぶことができます。検査を受けたからといって必ずしも全てわかるわけではなく、受けなかったとしても出生後の対応で多くの疾患に対処できます。出生前検査については、かかりつけの産婦人科医に詳しく聞いてみましょう。
先天性疾患があっても普通に生活できますか?
疾患の種類や程度によりますが、適切な治療やサポートを受けることで、多くの子どもが学校に通い、友達とかかわり、豊かな生活を送っています。たとえば、手術で治せる心疾患や口唇口蓋裂は、治療後に日常生活にほとんど支障がないケースも多くあります。先天性難聴も補聴器や人工内耳を使うことで言葉の習得が可能になり、社会に参加している方がたくさんいます。「この子の将来はどうなるの?」という不安は当然ですが、今の医療と社会の支援の中で、可能性はとても広がっています。
次の妊娠でも同じ病気になる可能性はありますか?
疾患の原因によって、次の妊娠でも同じ疾患が起きる確率は異なります。遺伝的な原因が明らかな場合は、次の子どもへの影響を遺伝専門医に相談することが大切です。一方で、染色体の数の変化(ダウン症候群など)は基本的に次の妊娠で繰り返す確率は低く、環境要因や原因不明のケースでは再発リスクが必ずしも高いわけではありません。「また同じことになったらどうしよう」という不安を一人で抱えず、次の妊娠を考える前に遺伝カウンセリングを受けることで、具体的なリスクや対策について丁寧に説明してもらうことができます。
まとめ
先天性疾患は、生まれつき体の一部に何らかの異常や違いがある状態を指し、その種類や原因、症状はさまざまです。妊娠中の検査で判明するものから、成長してからはじめてわかるものまで、発見のタイミングも一様ではありません。
大切なのは、「気になる」と感じたときに早めに相談することと、正確な情報をもとに一歩ずつ対応を進めることです。先天性疾患は、医療・福祉・教育などさまざまなサポートが整っており、診断を受けた後も子どもが豊かな生活を送るための支援が充実しています。
親御さん自身がひとりで抱え込まず、医療者や周囲のサポートをうまく活用しながら、子どもと一緒に前へ進んでいただければと思います。不安なことがあれば、まずはかかりつけの小児科や専門医に相談してみましょう。
<参考文献>
- 小児慢性特定疾病対策の概要
- NIPT等の出生前検査に関する情報提供及び施設認証の指針
- 子ども医療電話相談事業(#8000)について
- 新生児マススクリーニングについて(第2回こども家庭審議会成育医療等分科会 資料)
- 保護者の方へ(新生児マススクリーニング)
- 遺伝診療科(遺伝カウンセリング・出生前診断)
- 先天性心疾患の数と種類
- 子どもの心臓病の発症数
- 小児循環器学会ガイドライン
- 新生児スクリーニングとその対象疾患について
- 新生児マススクリーニング対象疾患等診療ガイドライン2019
- 医療費助成の概要
- 小児の心臓の病気(先天性心疾患など)
- 新生児聴覚スクリーニングとその後の精密検査
- 先天性難聴
- 新生児聴覚検査(新生児聴覚スクリーニング検査)を受けましょう
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