「難聴スクリーニングとはどんな検査?」「リファーと言われたけれど大丈夫?」と不安に感じている保護者の方も多いのではないでしょうか。
難聴スクリーニング(新生児聴覚スクリーニング)は、生まれたばかりの赤ちゃんの聴こえに問題がないかを確認するための検査です。先天性難聴は見た目だけでは気づきにくいため、早期に発見し、必要な支援につなげることを目的として実施されています。
一方で、「リファーは難聴ということ?」「再検査になったらどうすればいい?」「検査は痛くない?」など、初めて検査を受ける保護者にとって気になることも少なくありません。
この記事では、難聴スクリーニングの目的や検査方法、結果の見方をはじめ、再検査になった場合の流れや受けられるサポートについてわかりやすく解説します。
難聴スクリーニング(新生児聴覚スクリーニング)とは?
難聴スクリーニング(新生児聴覚スクリーニング)は、生まれたばかりの赤ちゃんに聴覚の異常がないかを確認するための検査です。難聴は見た目では気づきにくく、早期に発見できないと、言葉やコミュニケーションの発達に影響を及ぼすことがあります。ここでは、難聴スクリーニングの目的や受ける時期、検査方法について詳しく解説します。
難聴スクリーニング検査の目的
難聴スクリーニング検査の目的は、生まれつき難聴がある赤ちゃんをできるだけ早く見つけ、適切な支援につなげることです。先天性難聴は約1,000人に1〜2人の割合でみられるとされており、見た目だけでは判断できません。そのため、生後間もない時期に聴こえの状態を確認することが重要です。
難聴がある場合でも、早期に発見して補聴器の装用や療育などの支援を始めることで、言葉やコミュニケーションの発達を促しやすくなると考えられています。一方で、発見が遅れると、言語発達だけでなく社会性や学習面にも影響を及ぼす可能性があります。
難聴スクリーニングは病気を確定する検査ではなく、精密検査が必要かどうかを判断するための検査です。赤ちゃんの健やかな成長を支える第一歩として、多くの医療機関で実施されています。
いつ・どこで受ける検査?
難聴スクリーニングは、多くの場合、生後2〜3日頃の入院中に出産した産婦人科や病院で実施されます。赤ちゃんが眠っている間に行えるため、負担はほとんどなく、数分から10分程度で終了することが一般的です。
現在では多くの分娩施設で導入されていますが、すべての医療機関で実施されているわけではありません。そのため、出産予定の病院で実施しているかどうかは、妊婦健診の際に確認しておくと安心です。自治体によっては検査費用の助成制度を設けている場合もあります。
何らかの理由で出生直後に検査を受けられなかった場合でも、後日実施できるケースがあります。気になる場合は、小児科や耳鼻咽喉科、出産した医療機関へ相談してみましょう。
検査方法(OAE・AABR)の違い
難聴スクリーニングには、「OAE(耳音響放射検査)」と「AABR(自動聴性脳幹反応検査)」の2種類があります。どちらも赤ちゃんが眠っている間に行える安全な検査で、痛みはありません。
OAEは耳の中に小さなプローブを入れ、音を流した際に内耳から返ってくる反応を測定する検査です。短時間で実施できる一方、中耳に羊水が残っている場合などには再検査となることがあります。
AABRはイヤホンから音を流し、頭につけた電極で音に対する脳の反応を測定する検査です。内耳だけでなく聴覚神経から脳幹までの反応も確認できるため、より広い範囲の異常を調べられる特徴があります。医療機関によって採用している検査方法は異なりますが、いずれも早期発見を目的とした大切な検査です。
難聴スクリーニングはなぜ大切?
難聴スクリーニングは、赤ちゃんの聴こえの状態を確認し、必要な支援へ早くつなげるために重要な検査です。難聴は外見から判断しにくいため、出生後すぐに検査を行うことで早期発見につながります。ここでは、難聴スクリーニングが大切とされる理由を紹介します。
生まれつき難聴がある赤ちゃんもいるため
先天性難聴は、生まれつき聴こえに障害がある状態で、約1,000人に1〜2人の割合でみられるとされています。外見では健康そうに見えるため、家族が日常生活の中で気づくことは簡単ではありません。
また、難聴は家族に難聴の人がいなくても起こることがあり、妊娠中や出産時に特別な異常がなくても発症するケースがあります。そのため、「特別な事情がないから大丈夫」とは言い切れません。
新生児期に難聴スクリーニングを受けることで、症状の有無を早い段階で確認でき、必要に応じて精密検査や専門医療につなげることができます。赤ちゃんの将来の発達を支えるためにも、重要な役割を果たす検査です。
早期発見・早期支援につながるため
難聴は、できるだけ早く見つけて適切な支援を始めることが大切です。一般的には、生後1か月頃までに難聴の可能性を把握し、生後3か月頃までに精密検査、生後6か月頃までに必要な支援を開始することが望ましいとされています。
早い段階で補聴器の装用や療育を始めることで、音や言葉に触れる機会が増え、言語発達やコミュニケーション能力の向上につながる可能性があります。
一方で、難聴の発見が遅れると、言葉の習得や社会性の発達に影響を及ぼすこともあります。難聴スクリーニングは、赤ちゃんに適した支援を早く届けるための重要な第一歩です。
言葉やコミュニケーションの発達を支えるため
赤ちゃんは、生まれてから周囲の音や家族の話し声を聞きながら、少しずつ言葉を覚えていきます。そのため、聴こえに障害があると、言葉の理解や発語に影響が出る場合があります。
もちろん、難聴があっても適切な支援を受けることで、言葉やコミュニケーション能力を育んでいくことは十分可能です。補聴器や人工内耳、言語聴覚士による支援など、一人ひとりに合わせた方法が選択されます。
難聴スクリーニングによって早期に状況を把握できれば、子どもの成長段階に合わせた支援を受けやすくなり、将来の学習や社会生活にも良い影響が期待できます。
保護者が安心して子育てしやすくなるため
難聴スクリーニングは、赤ちゃんだけでなく保護者にとっても安心につながる検査です。検査で「パス」と判定されれば、聴こえについてひとつ安心材料になります。一方、「リファー」と判定された場合でも、すぐに難聴と決まるわけではなく、必要な検査へ進むきっかけになります。
もし難聴が見つかったとしても、医師や言語聴覚士、療育機関など専門家と連携しながら子育てを進められるため、一人で悩みを抱え込む必要はありません。
「もし難聴だったらどうしよう」と不安になる保護者も少なくありませんが、難聴スクリーニングは不安を早く解消し、赤ちゃんにとって最適な支援につなげるための大切な検査といえるでしょう。
難聴スクリーニングの結果の見方
難聴スクリーニングの結果は、「パス(Pass)」または「リファー(Refer)」のいずれかで示されます。初めて聞く言葉に戸惑う保護者も少なくありませんが、それぞれの意味を正しく理解することが大切です。ここでは、検査結果の見方や再検査が必要になった場合の流れについて解説します。
「パス(Pass)」とは?
「パス(Pass)」とは、検査時点では赤ちゃんの聴こえに大きな問題が認められなかったことを意味します。現時点で追加の精密検査は不要と判断されるため、多くの場合は通常どおり育児を進めることができます。
ただし、パスだからといって将来にわたって難聴の可能性が完全になくなるわけではありません。遺伝的な要因や病気などにより、成長してから難聴が現れるケースもあります。
そのため、普段の生活の中で音への反応が乏しい、言葉の発達が気になるなどの様子があれば、小児科や耳鼻咽喉科へ相談することが大切です。定期健診でも聴覚や発達について確認してもらいながら、お子さんの成長を見守りましょう。
「リファー(Refer)」とは?
「リファー(Refer)」とは、今回の検査では十分な反応が確認できず、再検査や精密検査が必要と判断された状態です。「要再検査」と考えるとわかりやすいでしょう。
リファーとなる理由はさまざまで、必ずしも難聴があることを意味するわけではありません。例えば、耳の中に羊水や胎脂が残っていたり、検査中に赤ちゃんが動いたり泣いたりしたことで正確な測定ができなかった場合にもリファーになることがあります。
そのため、結果を見てすぐに過度に心配する必要はありません。まずは医療機関の案内に従い、指定された時期に再検査を受けることが大切です。
リファー=難聴と決まったわけではない
難聴スクリーニングでリファーと判定されても、「難聴」と診断されたわけではありません。スクリーニング検査はあくまでも、さらに詳しい検査が必要かどうかを確認するための検査です。
実際には、再検査で「パス」と判定される赤ちゃんも少なくありません。出生直後は耳の状態が安定していないこともあり、一時的な影響で十分な反応が得られないケースがあります。
もちろん、精密検査の結果、難聴が見つかる場合もあります。しかし、現在は補聴器や人工内耳、療育などさまざまな支援体制が整っています。不安な気持ちは自然なことですが、まずは落ち着いて次の検査を受け、正確な診断を受けることが大切です。
再検査・精密検査の流れ
リファーと判定された場合は、まず医療機関で再検査を受けます。再検査でも十分な反応が得られなかった場合には、耳鼻咽喉科などの専門医療機関で精密検査を行い、聴力の状態を詳しく確認します。
精密検査では、赤ちゃんの月齢や状態に合わせて複数の検査を組み合わせながら診断を進めます。必要に応じて経過観察を行うこともあり、一度の検査だけで結果が確定しない場合もあります。
万が一、難聴と診断された場合でも、医師や言語聴覚士などの専門職と相談しながら、補聴器の装用や療育など適切な支援を開始できます。早期に対応することで、子どもの発達をサポートしやすくなるため、案内された検査は忘れずに受けるようにしましょう。
難聴スクリーニングで再検査になったらどうする?
難聴スクリーニングで「リファー」と判定されると、不安や戸惑いを感じる保護者も少なくありません。しかし、再検査になったからといって難聴が確定したわけではありません。大切なのは慌てずに医療機関の指示に従い、必要な検査や支援を受けることです。
落ち着いて再検査を受ける
リファーと判定された場合は、まず医療機関から案内された時期に再検査を受けましょう。出生直後は耳の中に羊水や胎脂が残っていたり、赤ちゃんの状態によって正確な測定ができなかったりすることがあり、それがリファーの原因になるケースも少なくありません。
再検査では耳の状態が落ち着いているため、正常な結果となることもあります。そのため、「リファーだったから難聴かもしれない」と決めつけず、まずは次の検査を受けることが重要です。
不安な気持ちを一人で抱え込まず、分からないことがあれば医療機関へ確認しながら進めましょう。
精密検査で詳しく調べる
再検査でも十分な反応が得られなかった場合は、耳鼻咽喉科などの専門医療機関で精密検査を受けます。精密検査では、赤ちゃんの聴力や聴覚神経の働きなどを詳しく確認し、難聴の有無や程度を診断します。
赤ちゃんの月齢や発達状況によって検査内容は異なり、複数回に分けて評価することもあります。そのため、すぐに診断が確定しないケースも珍しくありません。
正確な診断を受けることで、その後の対応や支援方法を適切に決められるため、精密検査はとても重要なステップです。
必要に応じて早期療育や支援につながる
精密検査で難聴と診断された場合は、必要に応じて補聴器の装用や人工内耳の検討、療育機関での支援などが始まります。子どもの聴力や発達に合わせて、一人ひとりに適した支援方法が選ばれます。
近年は、医療・教育・福祉が連携した支援体制が整っており、早い段階から専門家のサポートを受けられる環境が充実しています。
早期に適切な支援を開始することで、言葉やコミュニケーション能力の発達を促しやすくなるため、診断後も必要以上に悲観する必要はありません。家族と専門家が協力しながら、お子さんの成長を支えていくことが大切です。
不安なことは医師へ相談する
再検査や精密検査を待つ間は、「本当に難聴なのでは」「将来はどうなるのだろう」と不安になることもあるでしょう。しかし、インターネット上の情報だけで判断すると、かえって不安が大きくなることがあります。
気になることや分からないことがあれば、遠慮せず担当医や助産師、小児科医、耳鼻咽喉科医へ相談しましょう。検査結果の意味や今後の流れについて丁寧に説明してもらうことで、不安を軽減できる場合があります。
保護者が安心して子どもと向き合うためにも、専門家を頼りながら一歩ずつ対応していくことが大切です。
難聴が見つかった場合のサポート
難聴と診断されても、適切な支援を早期に開始することで、言葉やコミュニケーションの発達を促せる可能性があります。現在は医療・福祉・教育が連携した支援体制が整っており、子どもの成長に合わせたサポートを受けることができます。一人で悩みを抱え込まず、専門家と相談しながら進めていくことが大切です。
補聴器や人工内耳による支援
難聴の程度や種類に応じて、補聴器や人工内耳などの聴覚支援機器が選択されます。補聴器は音を大きくして聞き取りやすくする機器で、軽度から高度難聴まで幅広く使用されています。一方、人工内耳は補聴器では十分な効果が得られない重度難聴の場合に検討される治療法です。
どちらを選ぶかは、聴力検査の結果や子どもの成長、生活環境などを踏まえて医師が総合的に判断します。機器を装用した後も定期的な調整や経過観察が必要ですが、早期に適切な支援を始めることで、言葉の習得やコミュニケーション能力の発達をサポートしやすくなります。
言語聴覚士など専門職のサポート
難聴のある子どもの支援では、医師だけでなく言語聴覚士(ST)をはじめとする専門職が重要な役割を担います。言語聴覚士は、聴こえの状態に合わせて言葉の発達やコミュニケーション方法について専門的な訓練や指導を行います。
また、補聴器や人工内耳を使用する場合には、装用状況を確認しながら聞こえや言葉の発達を継続的に評価します。保護者に対して家庭での接し方や遊びを通した言葉の育て方をアドバイスしてくれることも少なくありません。
専門家と定期的に連携することで、子どもの成長に合わせた支援を受けやすくなります。
療育・教育機関との連携
難聴が見つかった場合は、療育機関や教育機関と連携しながら子どもの成長を支えていきます。乳幼児期は児童発達支援センターなどで療育を受けることがあり、遊びや日常生活を通してコミュニケーション能力や社会性を育む支援が行われます。
成長に合わせて、保育園や幼稚園、小学校でも必要な配慮や支援を受けられる場合があります。教育機関と医療機関が情報を共有することで、子どもに合った学習環境を整えやすくなるでしょう。
保護者だけで対応しようとせず、利用できる支援制度や地域の相談窓口を活用することも大切です。
家族ができる関わり方
難聴のある子どもの成長には、家族の温かい関わりが欠かせません。日頃から顔を見ながら話しかけたり、表情やジェスチャーを交えてコミュニケーションを取ったりすることで、安心して言葉や人との関わりを学んでいくことができます。
また、補聴器や人工内耳を装用している場合は、毎日の装用状況を確認し、定期的な受診を続けることも大切です。子どもの成長には個人差があるため、周囲と比較しすぎず、一つひとつの成長を見守る姿勢が求められます。
不安や悩みがあるときは、一人で抱え込まず医療機関や療育施設、自治体の相談窓口などを利用しながら子育てを進めていきましょう。
難聴スクリーニングに関するよくある質問
難聴スクリーニングについては、「受けたほうがいいの?」「リファーだったらどうなるの?」など、多くの保護者が疑問や不安を抱えています。ここでは、よくある質問とその回答を紹介します。
難聴スクリーニングは必ず受けたほうがいいですか?
難聴スクリーニングは法律で義務付けられている検査ではありませんが、多くの自治体や医療機関で受診が推奨されています。
先天性難聴は見た目では気づきにくく、早期に発見して適切な支援につなげることが重要です。検査は赤ちゃんへの負担も少ないため、特別な事情がない限り受けることを検討するとよいでしょう。
検査は赤ちゃんに痛みがありますか?
難聴スクリーニングは、耳に小さな機器を当てたり、イヤホンや電極を装着したりして行う検査で、痛みはありません。
赤ちゃんが眠っている間に短時間で終了することがほとんどで、注射や採血のような処置もありません。身体への負担が少ない安全性の高い検査です。
リファーだったら必ず難聴ですか?
いいえ、リファーと判定されても難聴が確定したわけではありません。
耳の中に羊水や胎脂が残っていたり、検査時の赤ちゃんの状態によって十分な反応が得られなかったりすることもあります。再検査で「パス」と判定されるケースも少なくないため、まずは医療機関の指示に従って再検査や精密検査を受けましょう。
検査費用はいくらですか?
難聴スクリーニングの費用は医療機関や自治体によって異なりますが、一般的には数千円程度が目安です。
自治体によっては検査費用を全額または一部助成している場合もあるため、自己負担がないケースもあります。詳しい費用については、出産予定の医療機関やお住まいの自治体へ確認すると安心です。
パスでも後から難聴になることはありますか?
あります。難聴スクリーニングでパスと判定されても、その後の病気や遺伝的な要因などにより、乳幼児期以降に難聴が現れることがあります。
そのため、音への反応が少ない、言葉の発達が遅いなど気になる様子があれば、検査結果に関わらず小児科や耳鼻咽喉科へ相談することが大切です。乳幼児健診でも聴覚や発達について確認しながら、お子さんの成長を見守りましょう。
まとめ
難聴スクリーニング(新生児聴覚スクリーニング)は、生まれつきの難聴を早期に発見し、必要な支援へつなげるための大切な検査です。検査は赤ちゃんへの負担が少なく、多くの医療機関で出生後まもなく実施されています。
「リファー」と判定されても難聴が確定したわけではなく、再検査や精密検査で詳しく確認することが重要です。万が一難聴と診断された場合でも、補聴器や人工内耳、療育、専門職による支援など、子どもの成長を支えるさまざまなサポートが用意されています。
赤ちゃんの健やかな発達のためにも、難聴スクリーニングの目的や結果の見方を正しく理解し、不安なことがあれば医療機関へ相談しながら適切に対応していきましょう。
<参考文献>
- 厚生労働省:新生児聴覚検査について
- 一般社団法人日本耳鼻咽喉科頭頸部外科学会:子どものみみ・はな・のど:新生児聴覚スクリーニング
- 公益社団法人日本産婦人科医会:先天性難聴の早期発見のために —新生児聴覚スクリーニングの重要性—
- 日本小児科学会:新生児聴覚スクリーニング検査の推進に関する提言
- 一般社団法人日本聴覚医学会:新生児聴覚スクリーニングマニュアル関連資料
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