「子どもの目つきが気になる」「写真で片方の目だけ見え方が違う気がする」
そんな不安を持つ保護者は少なくありません。斜視や弱視は、視力が急速に発達する乳幼児期に見逃されやすく、気づいた時には治療のタイミングを逃してしまうこともある病気です。特に片目だけの弱視は本人も周囲も気づきにくく、発見の遅れが大きな課題とされています。本記事では、子どもの斜視・弱視の基礎知識や原因、セルフチェック方法や治療法までわかりやすく解説します。
子どもの斜視・弱視とは?
子どもの目の異常の中でも「斜視」と「弱視」は代表的なものです。どちらも早期発見・早期治療が視力の発達にとって重要とされています。まずはそれぞれの意味と違いについて説明していきます。
斜視とは

斜視とは、片方の目の向きがもう片方の目とずれてしまう状態です。物を見るとき、通常は両目の視線が同じ方向を向きますが、斜視があると片目だけが内側・外側・上下にずれて見えます。ずれる方向によって内斜視・外斜視・上下斜視などに分類され、常にずれているタイプもあれば、疲れたときなど特定の場面だけずれる間欠性のタイプもあります。
見た目で気づきやすいため、写真を撮ったときや会話をしているときに家族が異常に気づくことが多く、比較的発見しやすい特徴があります。斜視は子どもの約2〜4%にみられるとされ、小児眼科で扱う代表的な病気のひとつです。
弱視とは

弱視とは、眼鏡やコンタクトレンズで矯正しても十分な視力が得られない状態を指します。視力は生まれてから成長とともに発達していく能力で、その発達過程で何らかの障害があると、脳が「見る力」をうまく育てられず弱視になります。弱視の子どもはおよそ30〜50人に1人程度(約2〜3%)いるとされ、決して珍しい病気ではありません。
片目だけが弱視の場合、もう片方の目でよく見えているために子ども自身も周囲も気づきにくく、発見が遅れやすい点が大きな問題とされています。両目とも弱視の場合はテレビに近づく、目を細めるといった仕草で気づかれることもあります。
斜視と弱視の違い
斜視は「目の向きのずれ」という見た目の異常であるのに対し、弱視は「視力そのものが十分に発達していない」状態です。斜視があると弱視を伴うことがあり、逆に弱視がきっかけで斜視が起こることもあるため、両者は密接に関係しています。
ただし必ずしも同時に起こるわけではなく、それぞれ別の疾患として診断・治療が行われます。どちらも見た目や日常の様子だけで正確に見分けることは難しいため、気になる点があれば眼科での検査を受け、正しい診断のもとで治療方針を決めることが大切です。
子どもの斜視・弱視の主な原因

斜視や弱視の原因はひとつではなく、生まれつきの要因から成長過程での要因までさまざまです。ここでは代表的な原因を3つの視点から解説します。
生まれつき起こることがある
斜視の中には、眼球を動かす筋肉や神経のはたらきに先天的な偏りがあることで起こるタイプがあります。生後まもなくから目の向きのずれが見られる乳児内斜視などがこれにあたります。
また、先天性白内障など生まれつきの眼疾患があると、視覚刺激が脳に正しく伝わらず、弱視につながることもあります。こうした先天的な要因による斜視・弱視は、生後早い段階から症状が現れることが多いため、乳児期からの丁寧な観察が発見のきっかけになります。原因が明確でない場合も多く、専門医による検査で見極める必要があります。
遠視や視力の発達が影響することがある
強い遠視があると、ピントを合わせようとする力が過剰に働き、その結果両目が内側に寄って内斜視(調節性内斜視)になることがあります。また左右の屈折度数(近視・遠視・乱視)に大きな差がある場合、視力の良い方の目ばかりを使うようになり、弱い方の目の視力発達が妨げられて不同視弱視を招くこともあります。
左右差がある場合は本人が見えにくさを自覚しにくく、視力検査で初めて発覚することも少なくありません。
病気やけがが原因となる場合もある
目そのものの病気やけがが原因で斜視・弱視が生じることもあります。たとえば先天性白内障やまぶたが十分に開かない眼瞼下垂などにより、視覚刺激が眼に届きにくくなると、視力の発達が妨げられます(形態覚遮断弱視)。乳幼児期の目のけがや炎症が視力発達に影響することもあるため、異常に気づいたら自己判断せず眼科を受診することが大切です。
また、目を動かす神経や筋肉に病気があると、眼球の動きが鈍くなり斜視として現れることもあり、この場合は眼科だけでなく他科と連携した検査が必要になることもあります。
子どもの斜視・弱視をセルフチェックする方法

子どもは見えにくさを自分から訴えないことが多いため、家庭での観察が発見のきっかけになります。次のようなサインがないか、日常生活の中で意識してみましょう。
黒目の位置がずれて見える
正面を見ているときに、片方の黒目の位置が中心からずれているように見える場合は斜視が疑われます。内側に寄る内斜視、外側にずれる外斜視のほか、上下にずれるタイプもあります。見る角度や体調、疲れ具合によって目立ちにくいこともあるため、いろいろな方向や場面で子どもの顔を観察してみるとよいでしょう。気になる際は動画や写真を残しておくと、受診時に医師へ状況を伝えやすくなります。
写真で片方の目だけ光り方が違う
フラッシュを使って正面から撮影した写真で、両目の瞳の中の光の反射(キャッチライト)の位置が左右で異なっている場合、斜視のサインである可能性があります。通常は瞳の中心付近に同じように光が入りますが、斜視があると片方だけ位置がずれて写ることがあります。日常のスナップ写真を見返す中で気づくことも多いため、普段から意識してチェックしてみましょう。
顔を傾けたり片目を閉じたりする
物を見るときに首をかしげる、顔を傾ける、片目を手で隠す・閉じるといった仕草を繰り返す場合、両目でうまく見えていない可能性があります。これは、見えにくさやものが二重に見える複視を無意識に補おうとする行動と考えられています。癖だと思って見過ごされやすいポイントなので、繰り返し見られる場合は注意が必要です。
物を見るときに目を細める・近づく
テレビや絵本を見るときに極端に近づく、目を細める、まぶしそうにするといった様子も視力低下のサインです。視力が十分に発達していない弱視の子どもは、無意識にピントを合わせやすい距離や角度で物を見ようとします。片目ずつ隠して見え方に差がないか確認してみるのも、家庭でできるチェック方法のひとつです。隠した瞬間に片方の目だけ強く嫌がる反応も、見逃さないようにしましょう。
子どもの斜視は”たまに”なら大丈夫?受診の目安

赤ちゃんの目つきが一時的におかしく見えることは珍しくありません。しかし、頻度や継続期間によっては受診を検討すべきこともあります。「様子見でよいのか」「すぐに受診すべきか」の見極めのポイントを解説します。
赤ちゃんは一時的に寄り目になることがある
生後数カ月の赤ちゃんは、両目の動きを協調させる機能が未発達なため、一時的に寄り目のように見えることがあります。これは成長とともに自然に落ち着くことが多く、必ずしも異常とは限りません。特に近くの物を見つめているときに寄り目になるのはよくある現象ですが、判断が難しい場合は早めに相談することをおすすめします。
成長しても頻繁に続く場合は受診を検討する
生後6カ月を過ぎても目のずれが頻繁に見られる場合は、斜視の可能性を考える必要があります。特に、疲れているときだけでなく日常的に目のずれが確認できる場合は、自然に治ることを期待して様子を見続けるのではなく、眼科での検査を検討しましょう。
気になる症状があれば早めに眼科へ相談する
「様子を見ているうちに治るかもしれない」という考えは、発見や治療の遅れにつながることがあります。視力の発達には限られた時期があるため、迷ったときはまず眼科を受診し、専門的な検査を受けることが安心につながります。乳幼児健診で指摘がなくても、家庭で気になる様子があれば健診を待たずに相談してよいとされています。
子どもの斜視・弱視はいつから治療を始める?

視力は生まれてから一定の時期にかけて急速に発達します。この発達の時期を逃さずに治療を始めることが、その後の見え方に大きく影響します。
視力の発達は幼少期が重要
子どもの視力は生後から急速に発達し、3歳頃までに大きく発達し、6〜8歳頃までにほぼ完成するとされています。この視覚の感受性期に、両目でくっきりとした像を見ることができないと、視力の発達が妨げられてしまいます。この期間は一度過ぎてしまうと取り戻すことが難しいため、乳幼児期の目の健康管理が重視されています。
早期発見・早期治療が大切
斜視や弱視は、発見が早ければ早いほど視力の改善が期待できる病気です。逆に発見が遅れ、感受性期を過ぎてから治療を始めると、十分な視力の回復が難しくなることがあります。
日頃から子どもの目の様子を観察し、少しでも気になるサインがあれば、早めに小児眼科を受診する習慣をつけましょう。
乳幼児健診も活用しよう
日本では1991年から3歳児健診に視覚検査が組み込まれています。近年は屈折検査の導入により見逃されやすかった弱視の発見率が向上しています。
ある自治体では屈折検査の導入によって「要医療」と判定される割合が大きく上昇したという報告もあり、視力検査だけでは見逃されやすい弱視の存在が裏付けられています。要精密検査となった場合は「問題なさそうだから」と先延ばしにせず、必ず眼科を受診しましょう。
子どもの斜視・弱視の治療方法

斜視・弱視の治療は原因やタイプによって異なり、複数の方法を組み合わせて行われることもあります。代表的な治療法を紹介します。
メガネによる矯正
遠視や乱視などの屈折異常が原因の場合、矯正用の眼鏡をかけて鮮明な像を脳に届けることが治療の基本となります。調節性内斜視のように、遠視用の眼鏡をかけることで斜視自体が改善する場合もあります。子どもは視力の発達とともに度数が変化しやすいため、定期的に眼科でチェックを受けながら、成長に合わせて眼鏡を調整していくことが必要です。
アイパッチ(遮閉法)による訓練

左右の視力に差がある不同視弱視などでは、視力の良い方の目をアイパッチで覆い、弱い方の目を意識的に使わせる遮閉法が行われます。1日に何時間行うか、どのくらいの期間続けるかは、年齢や視力の状態によって個別に決められます。家庭での継続が治療効果を左右するため、家族の協力が欠かせません。
点眼治療
アイパッチが難しい場合などには、視力の良い方の目に点眼薬を使い、あえて見えにくくすることで弱い方の目を使わせる方法がとられることもあります。アイパッチを嫌がる子どもの負担を軽減する目的で選択されることもありますが、いずれの方法でも定期的な視力チェックを続けながら効果を確認していくことが欠かせません。
手術が行われるケース
眼鏡や訓練だけでは目の位置のずれが改善しなかったり、斜視の角度が大きかったりする場合には、眼球を動かす筋肉の働きを調整する手術が検討されます。
手術の時期や方法は斜視のタイプや程度によって異なり、術後も定期的な経過観察が必要です。手術は目のずれを整えることが主な目的であり、術後も視力そのものへの治療が並行して必要になることがあります。
子どもの斜視・弱視は治る?

治療を始めた保護者が気になるのが「本当に治るのか」という点ではないでしょうか。ここでは治療の見通しと、治療後に気をつけたいポイントを紹介します。
早期治療で改善が期待できる
できるだけ早期に治療を開始するほど改善が期待でき、特に3歳頃までに開始できると良好な結果が得られやすいとされています。斜視についても、原因に応じた治療により目の位置や両目で見る機能の改善が期待できます。
ただし「自然に治る」と自己判断せず、医師の診断のもとで治療を進めることが大切です。
治療期間には個人差がある
治療にかかる期間は、弱視の程度や開始年齢、原因によって大きく異なります。数カ月で目標の視力に達することもあれば、数年にわたって根気強く治療を続ける必要がある場合もあります。一般的に開始年齢が早いほど治療期間が短く済む傾向があるとされています。
治療後も定期検査が大切
目標の視力に達した後も、視力が再び低下しないよう眼鏡の使用を続けたり定期検査を受けたりすることが重要です。特にアイパッチ治療を終えた直後は、視力が不安定になりやすい時期でもあります。治療がひと段落しても油断せず、医師の指示するペースで通院を継続しましょう。
スマホやタブレットは斜視・弱視の原因になる?

近年、子どものデジタル機器の使用が増える中で、目への影響を心配する声が多く聞かれます。スマホやタブレットと斜視・弱視の関係について説明します。
スマホだけが原因とはいえない
スマートフォン等の使用と斜視・弱視の直接的な因果関係はまだ十分明らかになっていません。一方で、近距離で画面を長時間見続ける生活習慣が、一部の斜視の発症・悪化に関与する可能性が指摘されています。
「スマホだけが原因」と考えるのではなく、使用時間や視聴環境にも配慮することが大切です。
長時間使用は目に負担をかける
近い距離で画面を長時間見続けると、ピントを合わせる筋肉が緊張した状態が続き、目の疲れや一時的な見えにくさを引き起こすことがあります。長時間の使用を避け、定期的に休憩を取り、遠くを見る時間を設けるなど、目を休ませる習慣を取り入れることが大切です。
家庭で意識したい目を守る習慣
子どもの目の健康を守るためには、画面との距離を30〜40cm以上保つ、明るい場所で使用するなど日頃から目に負担をかけない工夫が重要です。さらに屋外で遊ぶ時間を確保したり、家庭内で使用時間のルールを決めたりすることが、目の健康維持や異変の早期発見につながります。
子どもの斜視・弱視に関するよくある質問
子どもの斜視や弱視について、「自然に治ることはある?」「何歳までに治療すればいい?」「眼鏡は必要?」など、疑問や不安を抱えている保護者の方も多いでしょう。ここでは、子どもの斜視・弱視に関するよくある質問と回答をまとめました。
赤ちゃんの寄り目は様子を見ても大丈夫ですか?
生後数カ月の一時的な寄り目は成長とともに自然に落ち着くことが一般的です。ただし、生後6カ月を過ぎても頻繁に続く場合や常に目の向きがずれている場合は斜視の可能性があるため、自己判断せず眼科で相談することをおすすめします。
斜視は自然に治ることがありますか?
成長とともに目立たなくなるタイプもありますが、多くの場合は「自然に治る」と考えて様子を見続けるのは不適切です。原因によっては早期の治療が必要になることもあるため、目の向きのずれに気づいたら、まず眼科を受診して原因を調べてもらうことが大切です。
弱視は何歳まで治療できますか?
視力の発達には感受性期と呼ばれる時期があり、一般的に8歳頃までとされているため早期の発見・治療が望ましいです。ただし、年齢が上がってからの発見でも改善の余地が残っていることもあるため、諦めずにまずは眼科で相談してみましょう。
学校の視力検査で異常があったらどうすればいいですか?
学校の視力検査で「要受診」などの通知を受けたら、様子を見ずに早めに眼科を受診することが大切です。学齢期であっても、屈折異常や見え方の問題が見つかることがあり、早めの対応が今後の学習や生活の質にも関わってきます。
眼鏡はずっとかけ続ける必要がありますか?
必要な期間は子どもの状態によって異なります。遠視や乱視が原因の場合、成長とともに度数の調整が必要になったり継続が必要になったりします。自己判断で使用をやめず、定期的に眼科を受診しながら指示に従うことが大切です。
まとめ
子どもの斜視・弱視は、見た目や仕草の変化から気づけることもありますが、片眼弱視のように気づきにくいことも少なくありません。視力の発達には限られた時期があるため、少しでも気になるサインがあれば早めに眼科を受診することが大切です。
乳幼児健診や学校の視力検査も、発見の大切な機会として積極的に活用しましょう。治療は早期に始めるほど良好な結果が期待できるため、気になることがあれば「様子見」で済ませず、小児眼科での相談を選択肢に入れてください。
参考文献
- 公益社団法人 日本眼科医会「子どもの弱視・斜視」
- 公益社団法人 日本眼科医会「乳幼児・学校保健関連情報」
- 一般社団法人 日本弱視斜視学会「弱視」
- 一般社団法人 日本弱視斜視学会「3歳児健康診査における視覚検査について」
- 一般社団法人 日本弱視斜視学会「3歳児健診のご案内」
- 公益社団法人 日本視能訓練士協会「3歳児健診の視覚検査」
- 群馬県・群馬県医師会「3歳児健康診査における眼科検査の手引き~弱視の早期発見のために~」第3版
- 日本小児眼科学会・日本弱視斜視学会・日本視能訓練士協会監修「3歳児健診における視覚検査マニュアル~屈折検査の導入に向けて~」
- 日本眼科学会「弱視診療ガイドライン」
- 日本弱視斜視学会「斜視診療ガイドライン」
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